遺言書に当たる英語は、「Will」ですが、うまく自分の「意思」を遺言書に反映することにより、トラブルを避ける可能性が高まります。
よく使われる遺言書の種類に自筆証書遺言と公正証書遺言があり、下記のような特徴があります。
自筆証書遺言 *1 | 公正証書遺言 | |
作成 | 自筆で全文と日付を書き、 署名押印 |
口述をもとに公証人が筆記した 遺言書を遺言者・証人の前で読 上げ、全員で署名押印 |
メリット | 自分だけで作成可能 内容を秘密にできる 費用がかからない |
法律上の不備がない 偽造や隠匿の恐れがない 家庭裁判所の検認必要ない |
デメリット | 家庭裁判所の検認必要 偽造や隠匿の可能性あり 法的に無効の可能性あり |
公証人の手数料が必要 証人2名が必要 内容が公証人・証人にわかる |
*1「自筆証書遺言書保管制度」が2020年からスタートし、法務局に遺言書を預けることによって自筆証書遺言書のデメリットを避けることができるようになりました。
自筆証書遺言書保管制度では、法務局で遺言の形式のチェックが受けられ、紛失の恐れがなく、偽造や隠匿が防がれ、家庭裁判所の検認が不要になり、法務局が遺言者死亡を把握すると相続人に通知されます。
遺言書は、いつでも書き直すことができ、後で作成した遺言が優先されます。公正証書遺言を
自筆証書遺言で書き直すことも可能です。
遺言書を書いておくと、不要なトラブルを防ぐことができます。遺言書がない場合にトラブルとなる場合の一例をあげてみました。
@子どもがいない (推定相続人が配偶者と兄弟姉妹)
亡くなった方の配偶者と兄弟姉妹が相続人となり、あまり兄弟姉妹と交流がないと、遺産分割や相続 に関わる手続きの同意をもらうときトラブルが発生しやすくなります。
A相続人が多い (遺産分割協議に時間がかかる)
相続人の全員が近くに住んでいるいることは稀で、通常は、相続人それぞれが違う環境で暮らしてい るため、遺産分割協議に手間がかかります。
B先妻との子がいる
先妻との子との交流はないことが多く、遺産分割に関して先妻の子の同意ももらう必要がでてきます。
C内縁の妻がいる
内縁の妻は、相続人でないため、遺言がないと相続財産は、他の相続人のものとなるか、相続人がいなければ国庫に帰属してしまうようなこともあります。
D法定相続と違う配分をする
遺言がない場合、特定の物を特定の者に相続させたいと思っても難しくなります。
E特定の子どもに事業を承継したい
株式を相続人である事業承継者に譲りたいと考えても、他の相続人が遺留分などを主張するなど、うまく承継できません。
F債務がある場合
債務の存在を知らないで相続してしまい、債務の返済をしなければならない状況になる場合があります。
上記以外にも遺言を書いておいた方が良いケースは、いくつもあります。
遺言書には、法定遺言事項といって、遺言書に記入してあると法律的に有効になるものがいくつかあります。
代表的なものとして、相続分の指定、遺産分割方法の指定、子供の認知、推定相続人の排除、遺言執行者の指定などがあります。また、祭祀承継者の指定等もできます。
せっかく遺言書を書いても、法的に書式に不備があれば、無効となる場合もあります。
円満な相続に結び付くことを考えて作成した遺言も、内容によっては、逆に相続人を混乱させる場合があります。例えば、不動産の相続人間での共有や、あまりにも偏った相続財産の分配などが遺言書にあると、相続人が困る場合があります。
また、遺留分を侵害するような遺言も争いのもとになります。遺留分は、相続人の法的に留保されるべき相続財産の一定割合です。遺留分が侵害された相続人は、遺留分減殺請求を行って、侵害された遺留分をもらうことになります。
相続人の気持ちもよく考えて遺言の内容を決め、必要に応じて遺言書の中に付言事項を盛り込むことによって、争いを避けることができる場合もよくあります。付言事項は、法律的な効力はありませんが、故人の相続人に対するメッセージのようなもので、相続人が故人の気持ちを尊重するなどの効果がある場合も多くあります。
なかなか遺言書作成が思うように進まない方は、まずエンディングノートなどを書くことによって、過去や近い将来を見つめ直すことによって遺言書を作成すると良いかもしれません。
FPハーツ事務所では、遺言書作成者の意思を尊重し、相続人などの状況も考え、遺言書作成やエンディングノート作成のアドバイスを行っています。
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